2024年4月2日火曜日

報道記事/沖縄タイムス掲載 上妻毅コメント

202442()、以下の沖縄タイムス記事にNPW代表理事・上妻毅のコメントが掲載されました。


米軍利用 許すことに 専門家 「特定」合意に警鐘

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1335548

政府が県内2カ所などを指定した「特定利用空港・港湾」について、県内の離島振興などに携わってきたニュー・パブリック・ワークスの上妻毅代表理事は、「(政府と施設管理者の)枠組みの合意は武器や弾薬の輸送、米軍の利用を許容することにつながる」と警鐘を鳴らす。

政府は、沖縄で全国最多の計12施設を「特定利用空港・港湾」の指定候補として検討を進めてきた。上妻氏は「南西諸島狙い撃ち、主眼は沖縄」とみる。

内閣官房が公開する「特定利用空港・港湾」のQ&Aでは、これまで自衛隊が災害派遣や防災訓練以外の空港の利用を断られたり、入港に必要な調整が円滑にできず入港を断念したりした事例があるとしている。米軍の利用には「米軍が本枠組みに参加することはない」と否定する。

上妻氏は、そもそも「特定利用」とは何かが明確にされていないと指摘。近年、日米軍事行動の一体化が進み共同訓練も増えているため、米軍利用は自衛隊の訓練の一環と押し通される可能性があるとみる。

その上で、枠組みを受け入れれば「インフラ管理者は補助金の返還請求を恐れ、米軍の利用や弾薬搬入など住民が反対する事案があっても今後拒めなくなるだろう」と憂慮する。

関連予算が沖縄関係予算に計上される影響では「影響が出るかどうかではなく、事業自体が沖縄振興につながるかを見極める必要がある」と強調。「日米の一体化が進む中、軍事利用に対する沖縄県の姿勢と方針を明確にできるかが問われている」と話した。

(政経部・東江郁香)

2024年3月14日木曜日

テレメンタリー2024 『潰された自立~与那国島と自衛隊配備~』

 ANNnewsCH

「台湾有事」の懸念に揺れる日本最西端・与那国島

自衛隊の配備、強化が進むなか、“自立ビジョン”の実現を願う住民たちの思いとは

https://www.youtube.com/watch?v=YNKrubyBtyI


2024年2月26日月曜日

ドキュメンタリー『潰された自立~与那国島と自衛隊配備~』(琉球朝日放送)

20242月、琉球朝日放送(QAB)制作のドキュメンタリー『潰された自立 ~与那国島と自衛隊配備~』が全国テレビ朝日系列で放送されました。

番組では、昨年10月に収録されたNPW代表理事・上妻毅へのインタビューも紹介されました。


予告編 『潰された自立~与那国島と自衛隊配備~』 QAB NEWS Headline

https://www.qab.co.jp/news/20240223203319.html

特集です。中国の海洋進出を念頭に、国が沖縄を含む日本の南西諸島で自衛隊の体制強化する方針を打ちだした「南西シフト」先島諸島で、最も早く、陸上自衛隊が配備された日本最西端の与那国島。

かつては台湾との交易も盛んだった島は、そのつながりを復活させ、自立して生きる未来を描いていました。

 QABは与那国で進む自衛隊の強化と一度はついえた自立への取り組みを追い、ドキュメンタリー番組を制作しました。

日本最西端の島。与那国島。110キロ離れた台湾にそびえ立つ、3千メートル級の山々を望むこともできます。

 与那国島が周辺の島との市町村合併に揺れていたおよそ20年前。住民投票を経て、単独の自治体として生きていくことを決めた与那国の人々は、自らの進むべき道をある計画に記しました。台湾との交流活性化を掲げた、「自立へのビジョン」です。

田里千代基さん

「何も、夢物語、身の丈を超えたビジョンじゃなくてね、最低これはできる、先人がやったことをもう一回構築する」

そう語る、町議会議員の田里千代基さん。役場職員時代、台湾との交流促進のため現地に駐在した経験もあり、今も台湾の交流実現を願っています。

田里鳴子さん

「一つになれたんだよね、島がね」

元官僚

「やれるところまではいってみようと」

コンサルタント

「地域が主体の振興に取り組んできた。自立ビジョンを一つの基本方針にして」

町民が一丸になって歩んだ自立への足跡は、与那国島、そして台湾にも今もたしかに、残っていました。

それと交差するように与那国で進んでいるのが、自衛隊の強化です。

2016年、与那国島に配備された自衛隊。アメリカ軍との共同訓練も行われるようになり、ミサイルの配備計画も浮上しています。加えて、空港や港の整備・拡張計画で、政府は有事での利用を念頭に置いています。

糸数与那国町長

「自衛隊の増強とか有事でなんだかんだに考えるんじゃなくて」「50年に一度あるか、100年に一度あるかのチャンスかなと思うんです。インフラ整備っていうことに関して」

 糸数与那国町長は民間の利用を訴え、空港や港の整備を県や国に求めています。
 対する田里さん。新しい港は駐屯地の近くに置かれる計画で、島の要塞化を危惧します。その思いを、議場でぶつけます。

田里千代基さん

「アジアと結ぶ国境の島として、ビジョンを掲げながらやってきたのに、要塞の島になるのではないかと、激変し、環境が変わってきている」

「町民の信頼がなければ島の振興・発展はない」

町民が目指した自立への思いと、安全保障の国策がせめぎ合う、与那国島の、記録です。

台湾有事の懸念も語られる今、有事の住民避難やシェルターの設置、自衛隊の強化や訓練など、与那国島では危機をあおるような動きが先行して、私たちメディアもそれに追われがちになります。

その与那国島がかつて目指した自立の足跡を追うことで、南西諸島をはじめとした各地で進む自衛隊強化に、住民がどのように向き合えばよいか、考えるきっかけにしていただければと思います。


2024年1月18日木曜日

報道記事/第3回「竹富町訪問税審議委員会」

 2024111日、竹富町訪問税審議委員会が開催されました。

最終の会合となる本会議では、基本事項となる課税対象、徴収方法、税率とともに、特別措置を講じるべき対象について活発な審議が行われました。

以下、メディアの報道を紹介します。

NHK2024.1.11

竹富町が検討の訪問税で報告書 “原則2000円徴収が妥当”

https://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20240111/5090026283.html

竹富町が導入を検討している「訪問税」をめぐり、町が設置した委員会で、島を訪れる際に原則2000円を徴収することが妥当だとする報告書がとりまとめられました。

9つの有人島に4000人余りが暮らす竹富町には、美しい島や海を求めて、コロナ禍前には年間およそ100万人が訪れていて、ゴミの処理やインフラ整備などの財源確保が課題となっています。

このため、町では新たな税の「訪問税」の導入に向けて、有識者などでつくる委員会で検討が進められていて、11日、税金を納める対象や金額などを盛り込んだ報告書がとりまとめられました。

それによりますと、観光客の増加で今後さらに7億円程度の財源が必要であるとして、町民や町内の会社に勤めている人など一部の例外を除き、島を訪れる際に原則、1回につき2000円を徴収するのが妥当だとしています。

また、11日の会合では、島を頻繁に訪れる人に対する特別措置について2つの案に絞り込み、最終的な判断を町に委ねることになりました。

これらの案では、島を訪れる石垣市と与那国町の住民は年間5000円以上の決められた額を納めた場合に、そして、伝統行事の参加者や医療や介護目的の医療関係者や親族などは年間3000円以上の額を納めた場合に、何度でも訪れることができるとされています。

委員会は12日に前泊町長に答申を行い、町は早ければ3月の町議会に条例案を提出することにしています。

会合のあと、委員長を務めた神奈川大学の青木宗明教授は「我々は理屈にのっとって根拠のある数字を出した。それを今度は町の方でどうすべきなのか最終的にご判断いただきたい。訪問税を作って、外から入ってきて行政の仕事を増やす人にその一部を負担いただくというのは当然のことなので、住んでいる人と来訪する人の数字がすごくアンバランスな自治体は是非導入を検討すべきだと思う」と述べました。

八重山毎日新聞(2024.1.12

「訪問税」原則2000円 竹富町審議委 前泊町長へ答申

https://www.y-mainichi.co.jp/news/40174

竹富町が有人島への入域者を対象に導入を計画する法定外普通税「訪問税(仮称)」について、審議委員会(委員長・青木宗明神奈川大学教授・6人)は11日午後、町役場で最終となる第3回審議会を開き、税率は1人「2000円が適当」などとする報告書をまとめた。八重山圏域(竹富町除く)の住民も課税対象で、往来頻度の高い郷友会員や町内に仕事で通う事業者、エッセンシャルワーカー等は税負担が軽減される「年払い対象者」に位置付けた。同会は12日午前、前泊正人町長へ答申する。

訪問税は観光客等の来訪で発生・増幅する行政需要に対し、「原因者負担」の観点から膨張する経費の一部を来訪者に負担してもらう仕組み。同町によると、2021年度予算のうち、来訪者に対応するための行政需要は約10億円と算出しており、町の年間入域観光客数(約100万人)で割ると1人当たり約1000円程度となる。

一方で需要は年々増加しており、観光防災関連など実施されていない施策も含めると年間約20億円を試算。審議委員会では前回までに「持続可能な観光地として存続するための税率水準として2000円が適当」とする意見をまとめている。

今回はこれまでの協議内容を基に作成した報告書案について事務局から説明があり、委員らは非課税設定の可否と特別措置「年払い」対象者、小人価格の3点について意見を交わした。

八重山圏域の住民を一律非課税とするかの議論で青木委員長は「町民と同等に扱うという点でかなり現実的ではない。不可能」と指摘。小学生を無料とする小人価格は公平性の観点から「不均一課税とする明確な理由が見いだせない」とした。

年払いについては対象者の範囲と税率で意見が分かれたため、二つの案を用意し、町に判断を委ねることに決めた。「八重山圏域(石垣市・与那国町)在住で5000円以上」または「祭祀行事等に参加する郷友会会員、介護で通う親族、ヘルパー、医療関係者、事業者作業員、季節労働者などで3000円以上」のどちらかとなる。

委員からは「特別措置の審査は行うべきだ。ふるさと住民票を発行した人も対象にしてみてはどうか」(上妻毅氏)、「年払い対象者を公民館長に審査させるのは負担が大きく難しい」(大久研一氏)などの意見があった。

町は15日からの住民説明会、条例案に対するパブリックコメントで意見等を収集。早くて3月の町議会定例会に条例案を上程する。可決後は総務省同意を得て、施行・運用開始に向けた準備に入る。今後は特別徴収義務者の地元船会社、航空会社に概要を説明し、理解と協力を求めていく考え。

八重山日報(2024.1.12

訪問税、石垣市民にも課税 年払い制、2案を提示


会議翌日の112日には、審議委員長の青木宗明神奈川大学教授から前泊正人竹富町長に対して答申が行われました。

離島自治体の新しい自主財源確立に関わる具体的なプロセスに関わることができたことは光栄で、大変有意義な経験でした。

全国的にも先駆的な取り組みである竹富町「訪問税」の今後の進展を見守っていきたいと思います。 

NHK2024.1.13

竹富町検討「訪問税」“2000円適当” 委員会が町長に答申

https://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20240112/5090026293.html

竹富町が導入を検討している「訪問税」をめぐり、町が設置した委員会は、2000円の徴収が適当だとする報告書をまとめて町長に答申しました。町は、早ければ3月の町議会に条例案を提出することにしています。

9つの有人島に4000人余りが暮らす竹富町には、美しい島や海を求めて、コロナ禍前には年間およそ100万人が訪れていて、ゴミの処理やインフラ整備などの財源確保が課題となっています。

こうした中、新たな税の「訪問税」の導入に向けて町が設置した有識者などでつくる審議委員会は、島を訪れる人から原則2000円を徴収することが適当だとすることなどを盛り込んだ報告書をまとめ、12日、前泊正人町長に手渡しました。

報告書では、特別措置として、島を頻繁に訪れる石垣市と与那国町の住民、それに伝統行事の参加者や医療関係者、介護目的の親族などは、年間に一定額以上を納めると何度でも訪れることができるようにすることも提案されています。

町は、住民説明会を開いたうえで最終的に判断することにしていて、早ければ3月の町議会に条例案を提出することにしています。

前泊町長は「訪問税はこれからの町の発展に必ず必要なものだと強く思っています。責任ある観光と島々の住民が住み続けられる選ばれる島になるためにしっかり判断していきたい」と話しています。

沖縄タイムス(2024.1.13

竹富訪問税 2000円答申 審議委 3月議会にも条例案

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1290080

竹富町が導入を検討する訪問税を巡り、有識者でつくる審議委員会(委員長・青木宗明神奈川大学教授)は12日、来訪者から徴収する金額を「2千円が適当」とする報告書を前泊正人町長へ答申した。

島外からの伝統行事参加や訪問介護など住民生活に欠かせない目的の際には割り引く措置などを盛り込んだ。前泊町長は「竹富町には必要。しっかり判断したい」と述べた。15~26日、町内6カ所で住民説明会を開き、早ければ3月の町議会に条例案を提出する。

九つの有人島がある町内には人口の250倍超に当たる年間約100万人が訪れ、ごみ処理などの費用が増加。防災を含め、持続可能な観光地づくりのため、訪問税の導入を目指す。使途の自由度が高い「法定外普通税」を想定している。青木委員長は「万が一災害が起きても安心して滞在できるよう2千円が適当」と述べた。

沖縄テレビ(2024.1.14

竹富町の訪問税は原則2000円 審議委員会が答申

https://www.fnn.jp/articles/-/642466

竹富町が導入を検討している「訪問税」について審議する委員会は、一人あたりの徴収を原則2000円とする案を町に答申しました。

9つの有人離島を有する竹富町は、コロナ禍前の入域観光客が年間100万人を超えていて、ゴミの処理や公衆トイレなどのインフラ整備の財源確保が課題となっています。このため町は、島を訪れる人から徴収するいわゆる「訪問税」の導入を検討していて、審議委員会は一人当たり原則2000円とする答申を前泊町長に提出しました。

前泊正人町長:

「何のために必要なのかしっかりご理解頂いて制度としてしっかりと走らせる」

また、医療関係者など特定の目的で島を訪れる人は年間3000円、八重山圏域の住民については年間5000円とする事も盛り込まれています。

竹富町は住民説明会を開催し、3月の町議会に条例案を提出する方針です。

2024年1月9日火曜日

報道記事/沖縄タイムス掲載 上妻毅コメント

202415()、沖縄タイムスの特集記事にNPW代表理事・上妻毅のコメントが掲載されました。

軍民共用へ「呼び水」  真の離島振興と言えず

特集「インフラ整備 潜む防衛の影」㊦

ニュー・パブリック・ワークス上妻毅代表理事

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1285617

防衛体制の強化に向け、自衛隊や海上保安庁の利用を前提に、政府が民間の空港と港湾の拡張などを進める公共インフラ整備。県内の離島振興などに携わってきたニュー・パブリック・ワークス代表理事の上妻毅氏は「円滑な軍民共用の道を開くための“呼び水”となるのは間違いない」と警鐘を鳴らす。

公共インフラ整備について政府は、自衛隊による年数回の訓練利用が前提で「米軍の使用は念頭に置いていない」と繰り返してきた。

だが、これまで米軍は、屋良覚書に基づき民間以外の目的で使わないとされる下地島空港に飛来するなど「想定外の運用」を繰り返してきた。上妻氏は、既に各地で日米共同訓練が実施されているとし、今回も「当然、米軍が使う前提だろう」と推測。県や県民が求めてきた基地負担軽減と逆行するとみている。

2007年には与那国町の祖納港への米海軍掃海艇の寄港を巡り、事前に通知を受けた当時の外間守吉町長は外務省を通じて反対の意思を通達し、県は自粛を要請したにもかかわらず、米軍は「友好親善」の名目で寄港した。

与那国町への自衛隊配備の動きが表面化したのもその頃からだ。「掃海艇が入港する以前から島の軍事拠点化への準備は着々と進められてきた」と振り返り、県に対し、「寄港を強行された当時を思い出すべきだ」と訴える。

一方、人口減少などを背景に、経済振興につなげようと、かねて求めてきたインフラ整備の好機と捉え、政府方針に賛同する自治体もある。自治体の足元を見た計画の悪質さを上妻氏は指摘する。自衛隊配備や防衛予算に頼っても与那国町のように元々住んでいた人の流出には歯止めがかかっていない現状があることから「防衛に求めるのは筋違い。真の離島振興とは言えない」と批判した。

政府が挙げる施設候補の中でも特に、下地島空港の軍事利用や与那国町比川地区への港湾新設は、地元や県民からの反対の声も大きい。上妻氏は、地元の懸念や反対を払拭できない疑念があるとし、こう問いかけた。

「地元が置き去りのまま、誰がための整備か」

(政経部・東江郁香)

2023年11月17日金曜日

報道記事/第2回「竹富町訪問税審議委員会」

2023119日、竹富町訪問税審議委員会に出席しました。

第2回となる会議では、当該訪問税の課税対象、徴収方法、税率などを審議しました。

以下、各メディアの報道を紹介します。

日本経済新聞2023.11.10

沖縄県竹富町、訪問税2000円に 審議委員会が方針

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC104XO0Q3A111C2000000/

沖縄県竹富町が導入を検討している訪問税額を巡り、有識者などでつくる審議委員会は1人当たり2000円が妥当との見解をまとめた。20241月以降、一般からの意見募集や住民説明会を経て最終的な答申を町に提出する。町は答申を踏まえて町議会で条例を定め、24年度中の実現をめざす。

学者や地元代表者らで構成する委員会(委員長・青木宗明神奈川大教授)が9日に町内で開いた会合で、全会一致で決めた。

訪問税は自治体が条例により独自に課す法定外税にあたる。このうち特定の費用に充てる「目的税」と異なり、使途の自由度が高い「普通税」として徴収する。条例制定後に総務相の同意を経て導入が決まる。

徴収方法は船舶や航空運賃への上乗せを想定する。町民や未就学児は対象に含めない。町民以外で頻繁に往来する人には年間で一定の額を納めてもらう方向で検討する。

竹富町は石垣島を中心とする八重山諸島にあり、竹富島や世界自然遺産に登録された西表島など9つの有人離島を抱える。4000人あまりの人口に対し、新型コロナウイルス禍前には年間100万人以上の観光客が訪れていた。

町は「外部からの来訪によって標準を上回る行政需要が発生している」として、来訪者に負担を求める手立てを検討してきた。

町の試算では来訪者の増加に対応するための港湾や道路、水道施設などのインフラ整備に10億円ほどかかる。救急患者の輸送や防災対応も含めると、計20億円程度の費用が必要になると見積もっている。

世界遺産の西表島では自然環境を保護するためエコツーリズム推進法に基づく一部エリアでの入域制限を24年度にも始める。訪問税は「財源不足に伴う行政サービスの低下を防ぐ」(町税務課)狙いがあり、観光客数に制限をかける目的ではないとの位置づけだ。

前泊正人町長は「環境保全によって次の代に竹富町の自然をつないでいく責務がある」と強調する。「地域の人や来訪者にしっかりしたサービスを提供する体制を整えるという狙いを丁寧に説明したい」とも語る。

町では19年度から、竹富島で300円の「入島料」を任意で徴収してきたが、21年度の実績は約730万円で収受率は14%にとどまっていた。

訪問税を巡っては広島県廿日市市が、世界遺産の厳島神社がある宮島を訪れる人から1100円を徴収する「宮島訪問税」を10月に始めた。竹富町が検討中の訪問税と同様の法定外普通税で、島のトイレ整備やゴミ処分など維持管理の財源に活用する。

海外ではガラパゴス諸島(エクアドル)で入島時に海外客を対象に100ドル(約15000円)の入島税を課す例などがあるが、国内で2000円の水準は珍しい。

沖縄県内では環境美化など使途を明確にした法定外目的税を4つの離島自治体が取り入れ、1回の入域につき100円を徴収している。沖縄県は「観光振興を目的とする新税」(宿泊税)の26年度の導入を目指すが、業界団体からは「税の使い道が不明瞭」と慎重な検討を求める声も上がっている。

琉球新報2023.11.10

竹富町の「訪問税」観光客12000円で検討 来年度にも導入、全国でも最高額か 船舶や航空運賃への上乗せを想定

https://ryukyushimpo.jp/news/politics/entry-2462465.html

沖縄県の竹富町が検討を進めている訪問税(仮称)の徴収額について、有人島への入域客1人当たり2千円とする見通しであることが9日、分かった。使い道を定めず徴収する法定外普通税とする。訪問税に関する審議委員会(委員長・青木宗明神奈川大学教授)の2回目会合が同日、町役場で開かれ、徴収額2千円で意見が一致した。町によると観光に関連した法定外普通税の導入は県内初で、全国でも2例目となる。

竹富町には西表島や波照間島など九つの有人島がある。町は20241月に住民説明会などを実施し、早ければ24年度中にも導入したい考えだ。

県内では使途を特定した法定外目的税として伊是名と伊平屋、渡嘉敷、座間味の4村が環境協力税などの名目で導入し、それぞれ入域者1人当たり100円を徴収している。全国では宿泊税として、長崎市などが最大500円、京都市が最大千円を課税し、竹富町の2千円は入域者らへの税として最高額となる可能性がある。

竹富町は来年1月にパブリックコメントを実施。審議委はその後に3回目の会合を開き、最終報告案をまとめ、前泊正人町長に答申する。町は町議会3月定例会に条例案を提出し、可決されれば総務相の同意を得て導入となる流れ。徴収方法は有人島への船舶や航空機の運賃に上乗せする予定だ。

会合は非公開で、終了後に町担当者が琉球新報の取材に応じた。

【深掘り】竹富町、12000円の訪問税検討 今後の使途や徴収対象は?

https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2462696.html#Echobox=1699585160


沖縄タイムス2023.11.10

沖縄・竹富町の「訪問税」は千円に 年間100万人、人口の250倍の観光客が訪れる島々 オーバーツーリズム対策に

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1254138

沖縄県竹富町が導入を検討している訪問税(仮称)を巡り、町内外の有識者でつくる審議委員会(委員長・青木宗明神奈川大学教授)は9日、町内への来訪者から徴収する金額について「1人当たり2千円が妥当」と結論付けた。年間約100万人の来訪者を支える安定的な財源確保とともに、防災や持続可能な観光地づくりのために必要と判断した。年明けに住民説明会やパブリックコメントを実施し、最終的な取りまとめをして町に答申。町は議会での審議を経て、来年度以降の実現を目指す。

竹富町が検討している訪問税は、使い道の自由度が高い「法定外普通税」。国内での導入例は、日本三景の一つで世界遺産・厳島神社がある宮島(広島県廿日市市)のみ。宮島では1人当たり100円となっている。

離島ターミナルがある石垣から町内離島への船賃は、最も安い石垣-竹富の往復1520円(大人)から石垣-波照間の往復7830円(同)まで7路線。訪問税は、船賃などに上乗せして徴収する方針。町民は対象外で、介護など住民生活に欠かせない目的での来訪者は割り引くことを検討している。

竹富町の人口は約4千人で、年に人口の250倍超に当たる計約100万人が訪れる。港の整備やごみ処理などにかかる費用は年間約10億円。患者搬送やヘリポートの更新などの防災関連を含めた予算は計約20億円に上る。当初は1人当たり千円で試算していたが、行政サービスの費用は年々増加している。

審議委員会の青木委員長は訪問税導入による観光への影響を踏まえつつ、財政難やオーバーツーリズムなどの持続可能な観光地づくりの課題を挙げ「将来的な投資が不可欠で2千円が妥当との結論に達した」と述べた。

「訪問税」

竹富町が導入を検討している「法定外普通税」。「法定外税」は地方税法に定める税目以外に、地方自治体が条例で新設した独自課税で、特定の費用に充てる「目的税」と、使い道が自由な「普通税」がある。広島県廿日市が今年10月から「普通税」として宮島を訪れる人から1人100円の徴収を始めた。

12000円の「訪問税」、島の出身者が集まる「郷友会」の扱いはどうなる? 行事の練習で頻繁に往来 竹富町

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1254059

沖縄県竹富町が導入を検討している訪問税を「1人当たり2千円が妥当」と審議委員会が判断した。「住民が納得できる説明を」「来訪者へのサービスは」。予想されていた額より高く、関係者からは慎重な見方や注文を付ける声も出ている。

審議委員会委員の1人で町議会の大久研一議長は、行政負担の解消のため一定の理解を示しつつ「住民が納得する説明が必要だ」と語った。懸念しているのは郷友会の扱い。近隣の石垣市などには元町民が住んでおり、行事の練習や打ち合わせで頻繁に往復する。「島々の交流や伝統文化の継承に影響が出ないように」と配慮を求めた。

オーバーツーリズムを巡っては「竹富・西表島では当てはまるが、観光客を求めている島もある。必ずしも町内一律が望ましいわけではない」と指摘した。

沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「徴収後の事業内容に注目したい」と述べた。自然保護や行政サービスに充てつつ「税を支払う来訪者にもどういったサービスが提供できるか検討する必要がある」とした。

県は2026年度に法定外目的税の観光目的税(宿泊税)の導入を計画し、宿泊事業者が宿泊者から徴収する形を想定している。下地会長らは税負担の公平性などから宿泊料金の3%にすること、使い道を検証する組織を設置することなどを県に求めている。竹富町の訪問税を巡っても、徴収する事業者らへの配慮を求め「業務を担う船会社などにも寄り添った制度設計が求められる」と話した。

八重山毎日新聞2023.11.10

「訪問税」12000円に 竹富町審議委、行政需要を勘案

八重山日報2023.11.10

訪問税「2千円が妥当」 審議委で結論、船賃に上乗せ 竹富町

https://yaeyama-nippo.co.jp/archives/22117

第2回竹富町訪問税審議委員会(委員長・青木宗明神奈川大学教授)が9日午前、竹富町役場で開かれた。審議会は観光客などの来訪によって発生する行政需要をまかなうため竹富町訪問税(仮称)について「2千円が妥当」と結論づけた。2千円は船賃に上乗せして徴収し、住民票を持つ町民と町民の扶養家族は対象外となる。今後、住民説明会やパブリックコメント等で意見を聴取し、来年1月末に第3回審議会を開いて報告書をまとめていく方針。税金の使途を限定した法定目的税ではなく、限定しない法定外普通税として2025年度の導入を目指している。導入されれば広島県廿日市市の宮島に次いで全国2例目となる。

来訪者に対応するための行政需要は年間約10億円と試算。年間入域客数の約100万人で割ると一人当たりの金額は千円程度になる。それに財政難で進んでいない公共事業や持続的に必要なインフラ整備の費用、観光客を含めた防災備蓄費をまかなう金額、さらにはオーバーツーリズムに対応する案として千円、2千円、3千円の3段階の選択肢を議論した。

千円の場合、これからの観光振興、滞在者の受け入れ整備など十分な対応ができない点、さらに3千円では観光業者の反対が大きいことが予想されるとして、「2千円が妥当」との結論に至った。徴収される税は年間約20億円になる。

また、課税対象についてこの日の議論では、町民以外に介護従事者などのエッセンシャルワーカーや工事関係の施工業者、郷友会関係は特別扱いとして除かれる見込み。そのほか、課税対象外とする範囲は最終報告に向けて絞り込みをしていく予定。

青木委員長は審議会後の取材に応じ、「税金として課税することは必ず観光事業者のためにもなり、皆さんの得にもなる。観光で来ていただいた方の負担で将来に投資をしていくことは必要不可欠。(2千円は)間違いなく必要な費用を割り戻して出した数字」と説明。

その上で「これをきっかけに町民の方が5年先、10年先の竹富町のそれぞれの島の発展を考える起爆剤にしてほしい。およそ20億集まるお金をどう使うのか、みなさんで決めていただきたい」と述べた。

町は船会社3社に事前に船賃への上乗せを打診し、課題は今後も検討していくとした上で「協力は惜しまない」回答があったと説明した。

琉球放送2023.11.10

年間100万人が訪れる人口4000人の竹富町 「訪問税」1人当たり2000円の案 その目的とは

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/830213?display=1

八重山毎日新聞2023.11.11

竹富町訪問税千円案に猛反発 船会社「上乗せできない」

https://www.y-mainichi.co.jp/news/40010

竹富町が有人島への入域者を対象に導入を計画する「町訪問税」(仮称)について審議委員会が妥当と判断した「12000円」を巡り、同税を船賃に上乗せした徴収への協力を町から求められる予定の船会社からは「あり得ない」「上乗せできない」などと反発の声が上がった。

訪問税について町は八重山観光フェリー㈱、㈲安栄観光、石垣島ドリーム観光㈱の主要3社をはじめ、不定期航路を運航する事業者の旅客船舶の運賃に上乗せして徴収する方向で準備を進めている。

訪問税2000円が適用されれば、石垣島からの往復運賃は竹富3700円(現行1700円)、小浜5020円(同3020円)、黒島5250円(3250円)、大原6420円(4420円)、上原・鳩間7770円(5770円)、波照間1750円(8750円)に。竹富は運賃より訪問税が高くなる状況だ。

八重山観光フェリーの大松宏昭代表取締役社長は新聞報道で額を知り、「竹富島の往復船賃より高いなんてあり得ない。何かの間違いかと思った。01個多いと」と目を疑った。「大変な額。利用者が納得して払うとは思えない。社としても容認できない」との考えを示した。

来訪者の大幅減を強く懸念し、「竹富町観光があるからこそ、石垣市へのホテル滞在も生まれてくる。これは竹富町の観光だけでなく八重山観光全体のあり方が変わる問題だ」と強調した。

安栄観光の森田安高代表取締役は「とんでもない額だ。竹富町への観光客が減るだろう。そうなると、つぶれる観光事業者も出てくる。船会社は、燃油サーチャージで100円上げるだけで苦労しているのに、その20倍の訪問税を徴収することはできない。現実的な税額ではない」と疑問を呈した。

沖縄テレビ2023.11.13

「必要なら払う」「ちょっと高い」 竹富町の訪問税は2000円の公算

https://www.fnn.jp/articles/-/615008

NHK2023.11.15

竹富町 町民以外の訪問者から1回2000円の税徴収で検討

https://www3.nhk.or.jp/lnews/okinawa/20231115/5090025656.html


2023年10月6日金曜日

報道記事/琉球新報掲載 上妻毅コメント

 2023930()、琉球新報掲載記事(2面総合)にNPW代表理事・上妻毅のコメントが掲載されました。


地域外交の目標は「平和祈念資料館の入館者数増」? 

沖縄県の指標に識者が“違和感”「成果ではなく課題」

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-2320454.html