2015年8月1日土曜日

NPW広報/第5回「竹富町新庁舎建設のあり方検討有識者委員会」 -竹富町新庁舎建設のあり方に関する提言-

2015年7月23日、第5回「竹富町新庁舎建設のあり方検討有識者委員会」(最終委員会)が竹富町役場で開催されました。
会議終了後、町長に提言文書を手渡し、一年数ヶ月にわたった審議の締めくくりとなりました。





9つの有人島を抱える町の役場をどこに置くか、庁舎の建設位置をめぐる地元の論争は半世紀を超え、老朽化・危険家屋化した現庁舎の移転方針にも賛否両論以上の対立、住民の厳しい反目すらあります。
こうした中の委員会設置でしたが、より多くの方々の理解を得られる「新竹富町役場」の方向とあり方、全体像を導き出すことができたのではないかと思っています。







以下、提言要旨

1.竹富町が目指すべき方向

「新庁舎建設」にあたって竹富町が目指すべき方向について、以下のとおり提言する。
◇‘より良い行政サービスの提供’を基本要件とし、本庁舎だけではなく、出張所の新設・機能強化、既存の施設・組織との連携等、住民サービスの充実に向けた新たな行政システムとネットワークを構築すること
◇新庁舎と新しいネットワークを支える海上交通体系の充実を図ること
◇新庁舎における防災拠点機能の整備と竹富町全域での安全・安心の地域づくりを推進すること
◇竹富町全体を活性化する新たな取組み(人口減少時代の定住促進と地域振興を見据えた町民の福祉増進、新しいまちづくり等)を推進すること
◇世界自然遺産登録候補地でもある貴重な自然環境・生態系を擁する地方公共団体として、環境保全の英知を結集し、実施し得る最適かつ最善の措置を講じること
◇新庁舎の建設を機に、各島・各集落の個性を最大に尊重しながら、地域の一体感を醸成する新しい仕組みづくりに取り組むこと

2.新庁舎の整備にあたって

新庁舎の整備にあたっては、「竹富町全域における行政サービスの向上」を基本方針に、地域の現状と課題をふまえた行政施設(本庁舎、支所、出張所)の最適な配置と機能分担の中で「新庁舎」の位置づけと担うべき機能を明確化するとともに、島嶼型地域構造に適応するネットワーク型の行政システム構築を全体の枠組みとし、環境保全に関する要請や諸要件を充足する‘機能的かつコンパクトな新庁舎’を整備することを提言する。

3.新庁舎・支所等の機能分担のあり方について

当委員会では、本庁・支所・出張所を含む新しい町役場の全体像について、「住民の利便性」「地域への貢献」「地域の拠点形成」「効率性」「防災機能」「環境への負荷」の観点に基づく項目別評価と併せ、竹富町に最もふさわしい「新庁舎・支所等の機能分担のあり方」に関する総合評価を実施した。
その結果、「西表に本庁舎を移転。石垣に支所を新設。各島の出張所の配置・機能を強化する。」という案(パターン)が抽出された。
本評価結果をふまえ、町はより具体的な検討作業を進め、「新竹富町役場に関する基本方針(仮称)」など、竹富町としての基本プランないし基本方針を策定することを提言する。

4.新庁舎建設と今後のまちづくりについて

新庁舎の建設は、本庁舎及び庁舎移転に伴う関連施設の整備だけではなく、医療・福祉・教育環境の充実など、町内に拠点病院や高等教育機関などが存在しない本町の現状と課題もふまえた新しいまちづくりの好機とすべきである。
新庁舎建設を新たな契機に、町民の福祉向上に向けた各種施策・事業の強化、町全域での地域活性化への取組み、次代を展望した新しいまちづくりを積極的に推進していくことを提言する。

5.「新竹富町役場に関する基本方針(仮称)」に盛り込むべき事項

本提言を受けて竹富町が策定する「新竹富町役場に関する基本方針(仮称)」においては、特に以下の事項について、より具体的な検討ないし取組みを図るとともに、町民等へ十分な説明を行うこと。
◇最適な行政施設の配置及び整備等に係る財源について(根拠の明確化)
◇庁舎移転後の職員の通勤や居住に関する意向について
◇庁舎移転に伴う環境への影響の事前評価に必要な各種情報について
◇町内の各島・各拠点間の円滑な移動を支える交通ネットワーク拡充の具体的推進について(実証実験を含む)

むすび

老朽化のみならず、危険家屋化の問題も指摘されている現庁舎の建て替えは、防災上不可欠な行政機能の確保を含め、もはや一刻の猶予も許されない喫緊の課題である。
本「竹富町新庁舎建設のあり方に関する提言書」の内容をふまえ、竹富町が、町民の合意形成に向けた努力とともに、地域の発展に寄与する新庁舎建設事業を推進することを強く期待する。




委員長の大役は初めての経験でしたが、見識ある諸先輩の委員に支えていただきながら、ともかく手足を動かす委員長として微力を尽くした次第です。
人口減少時代のこれから、有人無人合わせて16の離島を抱え、町内に高校も基幹病院もない地域の活力を維持していくのは容易なことではありません。
しかし、それぞれ独自の伝統・文化と観光資源を持つ魅力ある島々、また、世界自然遺産候補地を行政区域内に擁する竹富町ならではの豊かさと可能性があります。
今後、役場の移転・建て替え問題は住民投票など次のステージに移りますが、新庁舎の整備を契機に、島嶼自治体の一モデルとなる新しいまちづくりを進めてほしいと願っています。

本委員会のこれまでの論議と提言文書(全文)は、以下のサイトで公開されています。


竹富町新庁舎建設のあり方検討有識者委員会(会議録等)